10年前、新居浜西高校を卒業した彼ら。
卒業記念イベントとしてこのステージに立った「LUNKHEAD」。
当時は、一度限りのつもりだった。
そしてそれぞれが大学に進学、一年後に改めて結成された彼らが、結成10年目を迎える。
インディーズ時代から続けてきた自主イベントを、今年は「史上空前のみかん祭ワンマン」として
特別なこの場所で開催する。
― 3月28日18:30。

会場が暗転したとたんに沸き上がる歓声、そしてできたばかりの「LUNKHEAD入場のテーマ」が流れ始めると起こる手拍子にファンの待ちわびる気持ちをヒシヒシと感じる。
そしてメンバーが一人ずつ登場し、強烈なバックライトが彼らのシルエットを浮かびあがらせると、ボーカルの小高が登場し「ENTRANCE」が流れ始める。
3月5日に発売されたばかりのベストアルバムの一曲目に入れられているこの曲は、
ファンと、そして新たな入り口になればという気持ちのこめられた曲。
ファンを迎え入れ、そしてファンに迎え入れられた彼らに相応しいスタートだ。
歴史をたどるように「東京にて」「千川通りは夕風だった」を歌い、ベストアルバムの話題へ。合田に話を振っておきながら、焦る彼を無視して話を進める小高。いつもながらのマイペースな関係が伝わってくる微笑ましいシーンだ。
そして話題は、シングルからアルバムへ。そんなニューアルバムに収録されている「ペルソナ」のディープな世界から、徐々にポップな世界へ。そして7曲目の「きらりいろ」を終えた時点で、会場の熱気は既に最高潮に達していた。
「夏の匂い」では手でマイクを塞ぎ、アカペラでサビを歌う。
絶好調の伸びやかな小高の声が響き渡り、ホールならではの響き方が、とても心地よい。そしてこの会場で“歌わないわけにはいかない”「僕らの背中と太陽と」。
今まさにこの歌の市民文化センターのこのホールで、この歌を聴いていると思うと、普段ライブハウスで聴くのとはまた違う、感慨深いものがこみ上げて来る。
ニューシングルでもある「素晴らしい世界」以降は、アッパーなナンバーが続き、常に観客の拳も挙がりっぱなしだ。「月光少年」のサビの両手をかざすお決まりのフリも、後方から見るとまるで手のひらの絨毯の上でメンバーが演奏しているような、そんな気にすらなってしまう。そして時折小高も前に出て観客を煽り、普段のライブハウスとは違う、ホール独特の距離感や緊張感などまったくもって無縁だった。中盤からは、熱気でステージがかすむほどだったのだから。
  
本編の最後は「歌うのが怖かった」と小高が語っていた「僕らは生きる」。
今ではライブになくてはならない曲になり、怖かったという本人自ら客席に降りてファンに手を差し伸べる姿まで観られるようになった。歌う事がいっそう楽しそうに見えるようになった。笑顔が増えた。私の隣にいた男子高校生も、すごく良い顔をして、大きな声で歌っていた。きっとこの年代の学生は大きな声で、みんなと一緒に歌う事を恥ずかしがるのがほとんどだろう。実は彼も楽しんでいることは充分見えていたのだが、それまでは遠慮がちに拳を挙げる程度のアクションだったのだ。だからこそ、この一曲が彼の心の最後の砦を超えて、LUNKHEADとの架け橋になった事は間違いないのだ。この曲があって本当に良かったと、いちファンとして改めて心からそう思った。
― アンコール
最初に出て来たリーダーの石川が話し出す。
「楽屋までみんなの声がちゃんと聴こえていたよ、ありがとう。
10年前にこのステージに立った時は、観客が対バンの10数人しかいませんでした」
でも、今は数百人のファンが目の前にはいる。そのことが、着実に彼らが前に進んできたことを証明していた。曲の間に、そして最後まで何度も「ありがとう」を繰り返す彼らの姿が、印象的だった。
― ダブルアンコール
「僕らと共に成長してきた曲を最後に歌います」
そう小高が語り、観客は一音たりとも最後の一曲を聴き逃すまいと聴き入っているような、そんな空気感だ。余韻を残すように「僕と樹」を歌い上げ「史上空前のみかん祭」は終了した。

ちょうど一年前、このステージでフリーライブを行った彼ら。
当時は、一曲一曲を確かめるように演奏し、原点に立ち戻って、また東京とういう彼らの戦場となる場所に旅立って行く感じが強かった。けれど、一年経った今年は、去年とは確実に違う現在の彼らの頼もしさを、みんなに見せてくれた。そんなライブだった。
「孵化」したランクヘッドの、また新たな一歩が始まる予感がした。
(レポート/ASAPI)
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